トライアスロンを始めたころの私は、水泳がとても苦手でした。
陸上競技部出身の元短距離選手ということで、体力には多少自信がありましたが、水の中に入ると、思うように呼吸もできず、体も思い通りに動いてくれませんでした。
「泳ぐ」ことは、私にとって未知の挑戦であり、克服しなければならない最初の大きな壁でした。
泳ぐってこんなに苦しいの!? ぶつかった最初の壁
高校1年生の夏、1年後の大会出場を目標にトライアスロンの練習を始めたころ、私はクロールでは25mを泳ぐのがやっとでした。
水が怖いわけではないんですよ。
小さいころから、川や海で遊んでいました。

海で遊ぶのも好きで、潜るのも大丈夫。

でも、泳ぎ続けるとなると話は別です。
プールで25mを泳いだあとは「5分は休ませて……」と思うほど疲労が激しく、特に後半は息がうまくできず「このまま死ぬかもしれない」と感じるほど苦しいのです。
スイミングスクールなどで泳ぎを習ったことはありません。
息継ぎのタイミングや水の抵抗のこと、体の浮かせ方など、何もかも分からないことばかり。水への恐怖心もありました。
自分で練習しようとプールに行きましたが、泳ぎだすと苦しい。
苦しいと慌てる。慌てると身体が沈む。そしてまた苦しい……。という悪循環に悩むばかりでした。
そんな私にとって、最初の一歩は、母のチームメイト「ごりおコーチ」との出会いでした。
STEP1 力を抜いたら、浮かべた! 「怖い」が「気持ちいい」に変わるまで

高校1年生の6月のある日、ごりおコーチから、クロールの基本を教えてもらうことになりました。
まずは泳ぐコースではなく、遊ぶ子供たちもいるフリーのエリアです。
その場でダルマ浮きや伏し浮きなど、浮かぶことから始めました。
次はけのびです。潜水でどこまでいけるかもやってみました。
これは水遊びの延長のようで、緊張していた私もついつい楽しくて笑ってしまいます。
そのあと、水のかき方、息継ぎの仕方と、ひとつひとつの動きを分解して丁寧に教えてもらいました。
そして、プールの端から通しで泳いでみようとなりました。
力を抜いてゆっくりと泳ぎ出し、習った動きを思い出しながら、息継ぎを1回、2回……と繰り返しました。
いつもより苦しくなくて、なんとか前に進むことができます。
ついにプールの端まで泳げたときは、我ながらびっくりしました!

泳ぎが苦手なはっちゃんに教えてくれるって言ってくれたとき、ほんと嬉しかった!



泳げなかった人が泳げるようになる瞬間って、教える側にとってもすごく嬉しいんですよ!
私が伝えたのは「力を抜いて浮くこと」と「呼吸すること」。
それだけでしたね。



身体がすっと浮く感覚が分かったとき、すごく気持ちよかったです!
その後は母とプールに通い、25mコースで泳ぐところを横から見てもらい、フォームの確認を重ねました。


始めのころは週末だけ練習していましたが、そのうち平日の放課後もプールに通うようになりました。
それでも25mを「なんとか泳ぎ切る」から「楽に泳げる」ようになるまでには、時間がかかりました。
しかし、練習を重ねていくと「息継ぎが少しずつスムーズになった」「腕の使い方が自然で楽になった」など、自分でも変化を感じるようになりました。
「今日の泳ぎは気持ちよかった!」と思えることが増え、泳ぐことへの恐怖心がだんだん薄れていきました。
STEP2 足がつかない深いプールでの集団泳に挑戦。不安と向き合う練習会
高校1年生の冬から春にかけて、富山県トライアスロン協会が主催するスイム練習会に2回参加しました。
この練習会では、協会の松浦弘之理事長の指導を受け、高飛び込み用の深さ4mのプールでウェットスーツを着て泳ぎました。


腰に浮き具を付けて、深さに少しずつ慣れることからスタートです。
足がつかないプールはとても怖くて、最初はプールの端から離れられませんでした。


そのうち、手を離して泳ぎだせるようにはなりましたが、「溺れるのでは?」という不安がずっとありました。
慣れないウェットスーツの締め付けのせいか、不安のせいか、胸がどきどきして息が上がりやすい感じがしました。
また、コースロープのないプールで、集団で泳いだのも、このときが初めてです。


周りの大人たちに必死でついていこうとするものの、疲れてくるとだんだんフォームが崩れて、全然進まなくなるのが自分で分かりました。
そのとき、「自分のペースで泳げないと、こんなに疲れるんだ」と知りました。
経験者の大人たちは、すいすいと泳いでおられます。
こんななかで泳いで、大会本番のときは、どうなるのだろう……と、新たな不安が生まれました。



飛び込みプールの足のつかない恐怖感を一生懸命 克服しようとする姿がとても、 輝いていましたよ!



ありがとうございます。
海で足のつかないところを泳ぐ前に、体験できてよかったです!
STEP3 ついに海へ! 初めての波に新たな恐怖との戦い


高校2年生になったころには、プールでの25mから50m程度なら楽に泳げるようになりました。頑張れば100mも行けるようになりました。
6月になると、海での練習を始めました。
母が所属するトライアスロンコミュニティ「毒キノコ連合」の練習会に参加。よりレースに近い環境です。
プールで水に慣れたつもりでしたが、海の練習は「一歩でも間違えたら、死んでしまうかもしれない」と緊張してしまい、初めてのときは恐怖でいっぱいでした。
波がある海では、プールとはまったく違った技術を習いました。
集団で泳ぐことを想定した人の後ろにぴったりついて泳ぐ練習、目を出して前を確認する練習など、実戦的な内容も含まれていました。


私には波のなかの息継ぎが難しく、海水を何度も飲んでしまいました。
また、私はもともと乗り物酔いしやすい体質なのですが、海で泳ぐと波の揺れで酔ってしまうことを知りました。
練習中に気分が悪くなって、吐いてしまったことも何回かあります。
プールでできたように泳ぐこともできないし、「泳ぎながら海で酔う」なんて聞いたこともありません。
最初は、浜に上がって見学しながら、自己嫌悪に陥ることもありました。


それでも回を重ねるうちに慣れてきたのか、少しずつ、泳げる距離や時間を増やせるようになっていきました。



海に浸かって慣れるだけでも、海で泳いだことがあるのとないのでは、気持ちがぜんぜん違うよね。



うん。絶対に、本番前に海練習はしておいたほうがいい!
すると、また気持ちに変化が起きてきました。
「海で泳ぐのが怖い」から「海での泳ぎ方を知っている」という自信です。
体が海の水や波になじんでいるような感覚になっていったのです。
自分でも驚くほど、スイムに対する姿勢が前向きになっていきました。



6月末にはデビュー戦が控えて、その前の練習だったよね。



大会は全然違うだろうなあと、不安だったよ~。



大会前だったから、こんなアドバイスを最後にしていましたね。
・大会本番では、何度止まっても大丈夫
・苦しくなった時は、ライフセーバーのボートやコースロープにつかまってもOK
・そのあとは、慌てず、落ち着くまで待ってから、泳ぎ出してみて
・もし、本当に無理だと感じたら、勇気を持ってリタイヤを選択しよう



慣れている人も「スイムは怖くなることがある」とおっしゃっていて、怖いのは自分だけじゃないんだと思いました。
ありがとうございます!
「昨日の自分に勝つ」小さな成長が、続ける力になった
泳ぎを練習していたころの私が心がけていたのは、「ちゃんとできたことを自分で認めること」でした。
どんなに小さな成長でもいいんです。
「今日は25m泳いでも息が上がらなかった」「波酔いしても最後まで泳げた」など、少しでもよくなったところを見つけて、自分を褒めるようにしました。
誰かと比べるのではなく、「昨日の自分に勝つ」ことを目標にしたのです。



練習のあとにはご褒美を決めておくのもモチベーションを維持のためにオススメ!
私はアイスを食べたり、好きな音楽を聞いたり……。



私は、ビールで決まりだね!



聞いてないし(笑)!
泳ぎきれた日。成長を実感した瞬間。変わっていく私
今でもよく覚えているのは、何回かめの海練習で、決められた距離を初めてしっかりと泳ぎきれた日のことです。
波の中、自分の力で前に進めた瞬間、「あの25mも泳げなかった私は、もういないんだ」と心から実感しました。
それは自分が生まれ変わったような、不思議な気分でした。
今でも「波や周囲の人たちに応じてうまく泳ぐ」ことまでは難しいのですが、プールでは「力を抜いて、ゆっく〜り、ずっと泳ぎ続ける」泳ぎ方ができるようになりました。
以前の短距離走のように力まかせで速く泳ごうというのではなく(苦しいけど、今から思うと遅かった)、ジョギングのようにリズムを保ちながら長く泳ぎ続ける泳ぎ方です。
そして、海に対する恐怖心も、かなり和らいだように感じています。
水が怖かった私が、スイムの練習を楽しくできるようになったこと自体が、大きな進歩です。
このようにして、私は「水泳」という苦手分野を少しずつ克服することができました。
もしこの経験がなかったら、スイムを前向きにとらえることはできなかったと思います。
また、これからの人生でも、苦手なことを乗り越えられた経験は「できないと思っていたことが、できるようになった」ことの原体験として、私を支えてくれると思います。


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次回はバイクとランの練習について、お話したいと思います。